あなたのいない世界

 断られたってきっとまたすぐに会えるだろうと思っていた。今までありがとう、これからもよろしく、って握手をして新しいスタートが来ると思っていた。こともあろうにそこからまたチャンスがあるかもしれない、とすら思っていた。

 そんなわけはなかった。
 今は時間が欲しい、というのが彼女の返信だった。

 俺は本当に大馬鹿野郎だった。自分の言葉の重大さに鈍感だった。もっともっと覚悟してなきゃいけなかった。彼女にとっては予期せぬ告白は深刻で、悩ましくて、もしかしたら苦痛だったかもしれない。

 つい先週までは昔よりも仲のいい2人だった。9年前、彼女に思いが届かなかったことよりも大切な友達を失ったことが辛くて悲しくて、そしてまた会えるようになって本当に嬉しくて、それだけで十分だと思っていたのに、俺はそれをまた壊してしまった。俺は本当にどうしようもない大馬鹿野郎だと思った。ちょうど9年前に流行っていた曲の歌詞が俺にはものすごく痛い。

 あなたに逢えた それだけでよかった
 世界に光が満ちた
 夢で逢えるだけでよかったのに
 愛されたいと願ってしまった
 世界が表情を変えた
 世の果てでは空と海が交じる


 何が「思いを伝えられてよかった」だ。彼女の気持ちを結局俺は何も考えてなかった。自分で思っているより、俺は彼女にとって実はそれほど大切な友達ではなかったのかもしれない。


 でも、俺の勝手な思いを真剣に受け止めて考えてくれて「本当にうれしい」と言ってくれたこと、「必ず会える2人でいようね」と言われたことを信じていたいと思う。

 今はただひたすら会いたい。どうでもいい話をして笑いあいたい。彼女の特別な人になりたいなんて高望みはきっともう抱かないから、またすぐに友達に戻れる日が来ることをひたすら望んでいます。もう結ばれない縁なのはよくわかった。それでも俺はできることならずっと近くにいたい。